2013年3月、政府は「和食:日本人の伝統的な食文化」と題して、日本食文化をユネスコ無形文化遺産に登録申請しました。
申請では、「和食」を料理そのものではなく、「自然を尊ぶ」という日本人の気質に基づいた「食」に関する習わしと位置づけています。
2013年11月、「和食」の無形文化遺産への登録が、ユネスコの事前審査で勧告され、同年12月に登録されました。
「無形文化遺産」とは、芸能や伝統工芸技術などの形のない文化であって、土地の歴史や生活風習などと密接に関わっているもののこと。
民族文化財、フォークロア、口承伝統などの無形のもの(無形文化財)を保護対象とすることを目指したものである。 ユネスコの「無形文化遺産の保護に関する条約」では、この無形文化遺産を保護し、相互に尊重する機運を高めるため、「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表(代表一覧表)」というリストを作成しており、日本からは「歌舞伎」「能楽」など21件(2013年4月現在)が既に登録されています。
似たような制度に、「世界遺産」がありますが、無形文化遺産が形のない文化を対象としているのに対して、世界遺産は建築物や自然などの有形のものを対象としている点が異なっています。
多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重
日本の国土は南北に長く、海、山、里と表情豊かな自然が広がっているため、各地で地域に根差した多様な食材が用いられている。また、素材の味わいを活かす調理技術・調理道具が発達している。
栄養バランスに優れた健康的な食生活
一汁三菜(1種類の汁物と3種類の菜からなる日本料理の基本的な膳立て)を基本とする日本の食事スタイルは理想的な栄養バランスと言われている。また、「うま味」を上手に使うことによって動物性油脂の少ない食生活を実現しており、日本人の長寿、肥満防止に役立っている。
自然の美しさや季節の移ろいの表現
食事の場で、自然の美しさや四季の移ろいを表現することも特徴の一つ。季節の花や葉などで料理を飾り付けたり、季節に合った調度品や器を利用したりして、季節感を楽しんでいる。
正月などの年中行事との密接な関わり
日本の食文化は、正月などの年中行事と密接に関わって育まれてきた。自然の恵みである「食」を分け合い、食の時間をともにすることで、家族や地域の絆を深めてきた。
「おせち料理」ではなく「正月におせち料理を食べるという文化」
「赤飯」ではなく「おめでたいときに赤飯を食べる文化」
「会席料理」ではなく「人をもてなすときに会席料理を出す文化」
「ちらし寿司」ではなく「雛祭りにちらし寿司を食べる文化」
「ご飯」や「味噌汁」ではなく「ご飯・味噌汁・おかずといった組み合わせを基本とする文化」
という、日本人が古くから持っている食のスタイルが「和食」として登録されたのです。
と、言うことは、クリスマスにフライドチキン、バレンタインデーにチョコレートなど、今現在定着しつつある新しいスタイルも、いずれは日本の食文化「和食」として認められる日が来るかも・・・?
「フランスの美食術」、「スペイン・イタリア・ギリシャ・モロッコ4カ国の地中海料理」、「メキシコの伝統料理」、「トルコのケシケキ(麦がゆ)料理」といった4件の食文化が社会的慣習として登録されており、「和食」で5件目となります。