日本料理のダシの素材は、鰹節、昆布、煮干、乾し椎茸など。主に乾物である事がいえます。はじめは保存目的であった"乾す""干す"という作業が、実は素材のうま味を増やし、うま味を出しやすくしていたのです。
カツオ出汁の材料であるカツオ節の製造工程は大まかに言うと、
@切るA煮るB燻すC発酵させる──の4段階。
発酵は仕上げの工程。カビを生やしては天日干ししてはらい落とし、またカビを生やして......を数ヶ月かけて繰り返すと、カビは、生き残るためにカツオの水分を吸収し、節が乾燥していきます。 そうして、カビの働きにより、生のカツオに含まれるアデノシン3リン酸といsう核酸が分解されイノシン酸といううま味成分に変化し、カツオ自身の酵素や他の微生物によって分解されるのを防ぎ、長期保存できる形に生まれ変わるのです。 これを枯節といい、削った製品には"かつおぶしけずりぶし"と表記されます。
これらの工程には4〜6ヶ月を要します。鰹節は世界で一番硬いたべものといわれています。
昆布だしのうまみ成分のグルタミン酸にかつおぶしのうまみ成分イノシン酸を合わせると、うまみが増す「相乗効果」は昔からの日本人の知恵でわかっていました。
うまみ1の昆布と、うまみ1のかつおぶしを合わせると、そのだしのうまみは7倍になります。
つまり合わせだしは、
1+1=7というミラクルが起こるのです!
人の舌の細胞表面には、味を感じる「味覚受容体」と呼ばれるタンパク質があり、これまで、「甘味」、「うまみ」、「苦味」を感じる受容体が見つかっているのですが、グルタミン酸とイノシン酸は、同じうまみ受容体でもそれぞれ別の場所で結合するからだということが解ってきています。
和食が、素材の味と色を生かし、塩分、油分、糖分を抑えることができるのは、出汁の科学の賜物ですね。
世界に誇る日本の農産物、「お米」ですが、実は栄養面からみた欠点があります。
タンパク質を含む米ですが、体内での利用率は少なく、魚、大豆食品とくらべてかなり低いのです。これはリジンというアミノ酸が少ないため。
リジンは体内でつくり出すことができない、食品から摂取するしかない必須アミノ酸です。
そして、米に不足しているリジンを多く含むのが大豆食品です。ですから、大豆からつくられたみそを使った味噌汁とご飯は、とても良い組み合わせなのです。
また、リジンは肉や魚にも豊富に含まれているのですが、魚の中でも特に鰹に多く含まれています。
味噌汁のだしをかつおに、具を豆腐や油揚げにすればさらに効果が上がります。
塩水で砂出ししたあと、調理する前に、しばらく塩水からあげたあさりを放置しておくとうま味が増すといわれています。これは、あさりに含まれる「コハク酸」という成分が増すため。
通常は水の中でえら呼吸をしているあさりは、地上にでて酸素を取り入れられなくなると、苦しくなってコハク酸をつくり出します。
つまり、あさりが生きていく上で過酷でストレスのかかる環境がコハク酸を生み出し、独特のうま味を創り出すのです。 砂出し→水を捨てて→乾燥しすぎないように濡らしたペーパータオルなどをかけて3〜4時間くらい放置 20度前後の室温で。冷蔵庫の中など、温度や湿度が低すぎると、コハク酸が増えにくい。※暑すぎるとあさりが傷んでしまうので注意が必要